艦これと五省とWebアクセス解析
データは結果を語るのみ
2016年12月6日
著者: 竹洞 陽一郎
この記事は、#Web解析 Advent Calendar 2016の12月6日分、Webパフォーマンス Advent Calendarの12月6日分として執筆しています。
祝! 「劇場版 艦これ」公開!
2016年11月26日に、「劇場版 艦これ」が公開となりました。
おめでとうございます!
先週は、家族でAmazon FireTVで、アニメ「艦これ」を全部観直しました。
今週末は、家族で「劇場版 艦これ」を観に行きたいと考えております。
「艦これ」を知らない方は、是非、TVアニメをご覧下さい。
DMMのゲームの「艦これ」を遊んだことがあれば、より一層楽しめます。
このゲームを遊んだことがなくても、大丈夫です、十分に楽しめます。
ストーリーとしては、特型駆逐艦である吹雪が鎮守府に着任した所から始まります。
運動神経が良くない吹雪が成長して、憧れの正規空母「赤城」の護衛艦となり、戦いの中で重要な役割を果たしていきます。
五省
劇中で、訓練や試練に挫けそうになる艦娘たちに、秘書艦の「長門」や正規空母「赤城」が口にするのが、「五省」です。
五省とは、旧大日本帝国海軍の士官学校である海軍兵学校において使われた5つの訓戒です。
一、至誠に悖る勿かりしか
真心に反する点はなかったか一、言行に恥づる勿かりしか
言行不一致な点はなかったか一、気力に缺くる勿かりしか
精神力は十分であったか一、努力に憾らみ勿かりしか
十分に努力したか一、不精に亘たる勿かりしか
最後まで十分に取り組んだか
この言葉に、「吹雪」をはじめとする艦娘たちは励まされて、成長していきます。
Webサイトの品質
私はウェブ解析士初級のテキストで、Webサイトの品質について章を担当して執筆しています。
Webサイトの品質とは、色々ありますが、私が対象にしているのは、配信品質と情報品質です。
配信品質
配信品質とは、Webページの表示速度と可用性(繋がりやすさ)です。
表示速度が遅いと、顧客体験が悪化してしまいます。
結果としては、ユーザがイライラして、サイトから離脱してしまいます。
可用性が低い、つまりエラーが発生すると、アクセス数そのものが減ります。
ユーザの期待値が下がって、再訪問率が下がります。
「日本でWebサイトに繋がらないなんて無いだろう」と思われる方もいらっしゃるかと思います。
都市部でも、携帯網であれば、基地局が混雑して繋がらない事は多々あります。
地方の人口密度が低い地域に行くと、重いサイトは繋がりにくいです。
情報品質
情報品質とは、ユーザにとって価値があり、各種信頼性に富む情報を提供しているかどうかです。
定量的には、クロード・シャノンが1949年に発表した論文「コミュニケーションの数学的理論」で「情報理論」として確立しました。
シャノンは、相手が知らない内容で驚きが大きいほどに、情報の価値が高いという事を、確率論をベースに数式化したのです。
定性的には、2004年にInternational Association for Information and Data Quality(国際情報・データ品質協会)が設立され、2006年からMITが音頭を取って、MIT Information Quality Programを開催しています。
現在、10の指標があります。
情報品質の研究には、Googleをはじめとする多くの企業が参画しており、Googleの検索品質評価ガイドラインには、情報品質の考え方がE-A-T(Experties: 専門性, Authoritativeness: 権威性, Trustworthiness: 信頼性)として反映されています。
Webサイトを更新・公開のその前に、「五省」に照らし合わせてチェックする
「艦これ」で、艦娘たちは、日々鍛錬して、戦闘準備を万端に整えて出陣します。
その鍛錬の中で、「五省」に照らし合わせて、自分のスタンスを省みて成長していく様は、私達のWebの改善にも、そのまま使えると思います。
至誠に悖る勿かりしか
Webサイトのコンテンツの内容は、誠実なものでしょうか?
倫理上、問題のあるような商品やサービス内容になっていないでしょうか?
本当にターゲットとなるユーザに価値ある情報を記載しているかどうかを、情報理論に基いて確認しましょう。
言行に恥づる勿かりしか
各ページの内容に矛盾はありませんか?
WebサイトやWebページの目的に必要十分な情報を掲載しているでしょうか?
情報品質の10の項目に照らし合わせて、定性的な品質を確認しましょう。
気力に缺くる勿かりしか
Webサイトの構成は、ビジネスモデルの反映です。
Webページに記載している内容は、十分に考えられて練られた内容になっているでしょうか?
このような事を考えるには精神力が必要です。ついつい、「こんなものでいいか」としていませんか?
努力に憾らみ勿かりしか
Webデザインやコンテンツ内容ばかりに気を取られて、表示速度や可用性は疎かになっていませんか?
表示速度が遅延すると、どんなに頑張っても、その努力が無駄になります。
遅いWebページは、Googleにも、ユーザにも支持されません。
表示速度を6秒から3秒に縮めただけで、セッション数が倍になった例もあります。
表示完了時間を2秒以下にすると、直帰率が軒並み50%以下になります。
HTMLの文法エラーを無くすと、検索順位が向上します。
表示速度を向上すると、検索順位は更に向上します。
不精に亘たる勿かりしか
以上の事をきちんとやってこそ、その結果がデータに現れます。
どこかで手を抜けば、それも結果としてデータに現れます。
そのようなデータは解析で役には立たないのです。
ウェブ解析士の果たすべき役割
米国の著名な統計家のネイト・シルバー氏は、著書「シグナル&ノイズ」で以下のように書いています。
データそのものは何も語らない。語るのは人間だ。
また、もう一人、米国の著名な統計家のカイザー・ファング氏は、著書「ナンバーセンス」で以下のように書いています。
ウェブ上のログデータは混沌とした世界だ。あるサイトのトラフィックを二つの業者が解析すれば、導き出された数字が一致することはまず考えられない。その差は20〜30%に及ぶときもある。
Webサイトの設計・制作者=ウェブ解析士が同一人物であるとは限らないではないでしょう。
もし、他人が制作したWebサイトを解析する場合は、サイトの設計やページの内容、表示速度や可用性がきちんとしているかどうかをチェックする必要があります。
きちんとしてないWebサイトのアクセスデータはゴミでしかないからです。そして、ゴミデータからはゴミの解析結果しか生まれません。
その点を見極められるかどうかが、Webのアクセス解析結果が、人によって20〜30%違う要因の一つになっているのかもしれません。